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公共事業化する宇宙開発 [▼科学ニュース New!]

公共事業というと悪しきイメージがまとわりついているが、それ自体はけっして悪いこと
ではない。みんなでお金を出し合って、役にたつものを作ったり持ったりしようというだ
けである。(例:Wiki 公共事業→
ただ、せっかく作ったモノが人々に与えてくれる効果を計れなかったり、実感できなかっ
たりすれば、単なる税金の使い放題と取られるだろう。

あちこちにはびこる「悪しき公共事業」だが、一部の宇宙プロジェクトにもその匂いがする。

●<情報収集衛星>打ち上げ成功…4基態勢に
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070224-00000081-mai-soci

このニュースのタイトルには「4基態勢に」とあるので、一見、情報収集衛星を褒め称え
ていると思いきや、そうではない。読んでいただければ分かるが、せっかく4基そろった
ものの、2003年から稼働中の2基の情報収集衛星があげた成果は「国家機密」の名目で、
明らかにされていないようだ。

こちらの記事にはもっと具体的な問題が語られている
●情報収集衛星、4機体制が完成 真に国民に役立たせる方策を(nikkei BPnet)
 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/matsuura/space/070226_4ki/

どうやらこの衛星があげた成果はおろか、衛星の性能が仕様通りでているのかも、衛星が
故障せずに運用されているのかも、明らかにされていないらしい。このままでは「誰も通
らない高速道路」を作るよりも酷い「最悪の公共事業」である。

ここまで5000億円以上が情報収集衛星へ投入されたそうだ。しかも4基のうち2基はまもな
く寿命なので、また新たに2基打ち上げる計画があるそうだ。国はまだまだ投資するだろ
う。事実、内閣府の職員定数の半数以上は情報収集衛星を運用する衛星情報センターに
勤務しているし、政府は宇宙開発を安全保障分野へ活用できるよう法案(宇宙基本法案)
の整備を進めている。国家機密の名の下に、無限に振り続けられる打出の小槌といえる。
宇宙ゼネコン(というのがあるのか?)はウハウハだ。

宇宙開発を悪しき公共事業化しないためには、上記の松浦氏が主張されるように、
取得した情報の一部でもよいので国民に公開することである。
当ブログでかつて批判めいた記事を書いた衛星「だいち」、その後毎月のように
プレス発表を行っており、すでに災害調査に役立ちつつある。立派である。
●サテライト・ナビゲーター:だいち(by 宇宙航空研究開発機構)
 http://www.satnavi.jaxa.jp/project/alos/

ようやく4基そろった情報収集衛星はどうか?
今後、注目してみたい。

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しかし情報収集衛星に限らず、科学的研究の多くは実は情報公開が進んでいないのではないか?
専門家の間では情報交換されていても、一般の人が使える情報にはなっていないのではないか?
だとすれば、すべての科学的研究は「悪しき公共事業」といえる。
そんな懸念から、拙ブログを立ち上げたわけだが、道半ばである。


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コメント 9

ちゃめ

 ふーむ。
 半分賛成で半分反対かな。

◆ 賛成の理由
 自前の軍事技術開発に掛ける費用、日本は高すぎる。
 自国開発が多すぎるんだよね。
 兵器開発には莫大な予算が掛かるんだけど、武器禁輸三原則のお蔭でメーカーは外貨を稼げないから、勢い単価が跳ね上がる。
 ゼネコンの談合なんて、可愛いもんだよ。

 小銃も戦車も他国製を買ったほうがずっと安いし、バトル・プルーフされている。
 ジープもトヨタにそっくりさんを開発させて、その費用を払うなら米軍のハンビーを買ったほうが安い。
 安全保障上、自国の軍事技術を育てるのは必要だし大切だけど、それ以上に食糧依存率の改善の方が、一国民の私には大切に思える。
 まぁ、その前に、他所の国と喧嘩しない国づくりが大切だね。
注:
 日本の主要企業の多く(八割近くかな?)が、軍事部門で利益をあげている事実に注意。

◆ 反対の理由
 軍事機密、特に情報収集関連や電子戦に関する情報は、極秘でないと意味がない。
 性能や仕様が極秘であるからこそ、「武器」として成立するわけであり、他国にその性能がばれてしまうと、それは「武器」ではなく、「悪しき公共事業」に成り下がる。
 国民に成果を還元するならば、偵察衛星の「武器性」をいささかも損なわないようにする事が条件になるだろうね。
 迂闊に情報を公開すると、それは「本末転倒」の見本になってしまうだろうね。

 と言う訳で、 半分賛成で半分反対な訳だよ。
by ちゃめ (2007-03-01 16:45) 

竜

うーん、私は松浦氏の主張に概ね同感なのですが、とにかく情報収集衛星については「性能や仕様が極秘」という前提から既に崩れていると思うのです。ちょっとでも宇宙開発に絡んだり、衛星リモセンに関わっている技術者、研究者なら、この衛星がどのようなセンサーを搭載していてどの程度の性能があるかというのはかなりの確度でわかります。

三菱が担当して、かつ開発期間が短いことから、衛星の大きさは明らかだし、大きさが分かれば光学衛星の分解能は自動的に決まる(このへんは昨年の日経BPの松浦氏の記事にあり)。合成開口レーダーにしても、「ふよう」や「だいち」とそんなに異なる性能があるはずもない。で、軌道も丁寧に米国がオープンにしてくれているし、ちょっと大きめの天体望遠鏡で観測すれば自分で計算することも可能。

そりゃ、誰でも自明とまでは言いませんが、上記のような推測の出来る人はうちの職場でも多分2〜30人程度。気象庁、産総研、国土地理院、大学、メーカーなどなど合わせればかなりの数に上るはず。

と言うわけで、データの出し方を少し工夫して使えるようにしてよ、というのが私の意見。なにしろ米国なんてスペースシャトルによるレーダー観測で構築したSRTM-1と呼ばれる1秒メッシュ(約30m)分解能の地形データをWEBで公開しているんだし。

長文ご容赦。
by 竜 (2007-03-01 23:38) 

MANTA

ちゃめさん、お久しぶりです。
>軍事機密、特に情報収集関連や電子戦に関する情報は、極秘でないと意味がない。
これは軍事衛星ではありません。情報収集衛星です。上記のYahooの記事によれば、災害に関する情報も提供することになっていますが、なされていません。目的どおりに働いていないものは、無駄といわれても仕方ないと思います。

またYahooの記事には衛星の軌道がばれるのがウンヌンとありますが、ばれています。
http://homepage2.nifty.com/m_kamada/javascript/satellite/index.htm
(このサイト、凄いですよ)
by MANTA (2007-03-02 08:07) 

MANTA

> 竜さん、コメントありがとうございます。
関係者?からもそういう意見なのですね。同様のことは松浦さんの本
「国産ロケットはなぜ墜ちるのか」にもありますね。
この衛星が本当に必要だ、と国民が思わない限り、多くの人の労力が
無駄に終わることを危惧します。
by MANTA (2007-03-02 08:11) 

ちゃめ

>これは軍事衛星ではありません。情報収集衛星です。

 こういう言葉のあやではぐらかすのって、コメントを投稿した側としては甚だ不快だよね。
 まぁ、学者さんはそういう世界の住人なんだろうから、脊髄反射的にそう反応するのだろうから、仕方ないけどね。

 海外からこの衛星がどう見られているかは、下記の記事を参照されたい。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/6392101.stm
 "spy satellite" とあるから、つまり偵察衛星=軍事衛星として、見られているんだよ。

 情報戦のえげつなさと、情報管理や情報操作が戦争および平和時の外交において如何に重要なのかにも、考えを向けるべきだね。
 性能が推測できて、軌道がわかっていても、むざむざその推測を裏付けるような情報を、外国や仮想敵国に渡さないのは、情報戦においては当たり前の話。
 それどころか、ニセ情報やわざとスペックを誤魔化した情報を開示して、相手を騙す事など日常茶飯事。
 時として味方もニセ情報で騙すのが、情報戦のえげつなさ。
「情報」そのものが価値をもつ安全保障の意味を、もう少し考えてみたらどうだろうか。
 ビジネスの世界でも、これは同様だよ。
by ちゃめ (2007-03-02 20:48) 

MANTA

- > こういう言葉のあやではぐらかすのって、コメントを投稿した側としては甚だ不快だよね。

では海外メディアが「軍事衛星」だといえば、この衛星たちは軍事衛星になるのですか? > ちゃめさん

情報収集衛星は軍事衛星ではありません。内閣官房組織令第4条の2第2項によれば「我が国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集を目的とする人工衛星」とされています。

問題は「大規模災害への対応をする」といい、予算を獲得しておきながら、その情報を*何も*出さないことにあります。上の記事にもある「だいち」の活躍と比べてみてください。

なおWikiによれば「2007年2月24日のレーダー2号機打ち上げ後の記者会見で、今後は災害時には画像の関係機関への提供を検討すると明らかにした」だそうです。まだ検討のレベルですが。
松浦さんや私の主張は間違ってますか?
by MANTA (2007-03-03 14:01) 

ダラちゃん

タイムリーにも?こんな記事が。
http://r25.jp/index.php/m/WB/a/WB001120/id/200703081107
「明らかにされていない」のか、
はたまた単に「目的が不明確」なのか・・・

こんなに時間もお金もかけて結局目的も果たせなくて、
ぬるいのね~、って思われても仕方ないかも。
by ダラちゃん (2007-03-11 21:01) 

MANTA

- そうですね、ルナーAは本当に残念でした。この失敗の原因は
きちっと追求されて、今後に生かされる必要があります。情報収集衛星
はその段階にすら達していません。成功したのか失敗したのか、だれも
知らないのですから。
by MANTA (2007-03-12 00:28) 

MANTA

おまけ:スパイ衛星の軌道はバレバレだそうです。
●あまりにあんまりな記事にがっくり来る
 (松浦晋也のL/D)
 http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2006/03/post_26e9.html

by MANTA (2013-01-28 09:13) 

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