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サステイナブル・エナジー [▼このブログについて(Q&A)]

前の記事でメタンハイドレートの将来について書いたところ、次のようなご質問を頂きました。

>メタハイは化石燃料の範疇に入ると思うけど、再生利用可能なエネルギーで、需要が賄
>えるようになるまでは、とても有望なエネルギー資源になると思うなぁ。でも、メタハ
>イの実用化がサスティナブル・エナジーの実用化よりも遅かったら、画餅で終わっちゃ
>うけどね。このあたり、どうなんだろう?

「サステイナブル・エナジー」とはなんでしょう?
検索してみましたがよくわかりません。ただ「サステイナブル」という言葉は最近よく聞
きます。意味は「持続可能な」。将来に負担を残さないようにしつつ、社会を維持・発展
させるという考え方です。

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察するところ「サステイナブル・エナジー」とは次の2つをさすようです。
1)自然エネルギー
 例:太陽光・風力・波力・地熱などを用いた発電。
   生物から取り出したバイオ燃料(エタノールやガス)
2)環境負荷の少ないエネルギー
 例:CO2を排出しない燃料電池、水素ガス

メタンはCO2を排出しにくいので、メタンハイドレート自体も「サステイナブル・エナジー」に
属するともいえますが、とりあえず除外しましょう。もしこれらが進歩すればいいですね。
特に自然エネルギーは厳しい自然条件の日本の風土によくあってると思います。

では、ご質問のように「メタハイの実用化がサスティナブル・エナジーの実用化よりも遅
かったら、画餅で終わっちゃう」のでしょうか?

私は資源工学は勉強していないのでよくわからないのですが、2つの観点から
「自然エネルギーが実用化したとしても、石油やメタンハイドレートなど複数のエネルギーを
使えるように備えておいて、その場その時に適したものを選ぶ」ということがよいとおもいます。

理由1:エネルギーの特性の違い
エネルギーにはそれぞれ特性があります。自然エネルギー(太陽・風力・波力・地熱など)
は一般に供給が不安定です。バイオ燃料もトウモロコシやサトウキビが材料だったりしま
すので、気候変化に左右されるでしょう。サステイナブル・エナジーはCO2排出削減の面
では優れてはいますが、安定供給できる従来型のエネルギー資源も必要でしょう。

理由2:エネルギーコストの変動
安いエネルギーほどよく使われます。エネルギーの価格はそのときの社会情勢に左右され
ます。例えば最近の原油価格の高騰がメタンハイドレートへの期待に拍車をかけるわけです。
あるいは日本はCO2の排出税(炭素税)を課してませんが、これが始まれば自然エネルギーや
燃料電池は普及するでしょう。一方で、CO2を地下に埋める方法が確立したら、石油やガスを
従来どおり使い続けるかもしれません。つまり、エネルギーの価格は相対的なものであり、
技術的革新による低価格化だけではなく、社会情勢次第でつねに変化するわけです。

これらのエネルギーが本来持つ不安定性と、社会の不安定性の両方を考えると、あるエネルギー
に特化することは難しいと思います。

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うーん、エネルギーのことはもうチョット勉強したいですね。

おまけ:Wikipediaの「メタンハイドレート」の項に、2006年の日本海のことも載ってるね。
メタンハイドレート Wiki ほえー。


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コメント 6

ちゃめ

 おおっ、私の要領を得ない質問に早速回答してくれて有難うございま~す。

 なるほどね。
 エネルギー特性が違うから、安定供給できる従来型と、再生利用可能な資源の利用を並立させる、という考え方やね。

 でも、私が問いたかったのは、再生可能資源が安定供給の問題をもカバー(ex.エネルギーを水素に転換して保存、保管方法が問題)できるほど、完全に実用化される前に、メタハイの利用が実用化できるのか?という「時間」に関する問題だったんだよね。
 はははっ。
 どう?また投稿のネタが増えたかな? (笑)

(追記)
 サスティナブル・エナジー("sustainable energy")は「再生利用可能な資源」、若しくは「持続的利用が可能な資源」という意味で使いました。
 ですから、私の解釈ではメタハイは再生利用不可能な化石資源ですので、「サスティナブル」ではないといえます。
(※:「サスティナブル」は Buzz word の類いですが、使われ始めたのは "sustainable development"、 つまり「持続可能な開発」が提唱された1992年の地球サミットがきっかけだと思います)
by ちゃめ (2006-11-24 10:14) 

MANTA

- コメントありがとうございます > ちゃめさん
>再生可能資源が安定供給の問題をもカバー
さすが、よくご存知です。保管の問題をクリアすれば安定供給への道が開けます。たとえば電池よりももエネルギー効率の良いキャパシタで電力を保管する試みも始まっています。
とはいえ所詮は自然頼み。近年の世界的な異常気象を考えれば、安定供給を確保するためには、自然エネルギーを取り出す技術だけではなく、自然の予測や制御が必要でしょう。できるでしょうか? 全部できる!という夢物語がかなえば、我々はどこからでもエネルギーを取り出せます。

一方、コスト面で言えばこんなことも考えられるかもしれません… 地球温暖化によって今後何十年間にメタンハイドレートが大気にどんどん放出され、温暖化を促進することが分かったとしましょう。こうなったらメタンハイドレートは積極的に掘削・回収しないといけません。メタンハイドレートを使うほうが「サステイナブル」になるわけです。メタハイ利用は推奨され、コストも下がります。つまり、どのエネルギーが社会にもっとも適しているか(安くなるか)は社会情勢や環境変動によって急速に変化しうるわけです。

ちなみにWikiで「持続可能な開発」をみると、どこにも化石資源のことは載っていませんが、「持続可能性」をみると化石資源へ依存した人間活動は持続可能性がない、とされています。どうも「サステイナブル」という言葉は特に具体的な定義はないようです。
by MANTA (2006-11-24 18:35) 

ちゃめ

>つまり、どのエネルギーが社会にもっとも適しているか(安くなるか)は社会情勢や環境変動によって急速に変化しうるわけです。

 ふむふむ。
 なる程です。
 科学者は視点が広いね、やっぱり。 =)

 ちょっと考えてたんだけど、「持続可能なエネルギー( "sustainable energy" の直訳)」の研究開発は、官民こぞって取り組んでるよね。
 まぁ、比較的容易にビジネスベースに乗せられるから民からのお金も出るし、ベンチャー企業での研究も盛ん、って事なんだけど。
 でも、メタハイの技術開発は限られた機関でしかやってないよね。
 となると、「技術革新の速度が、投入された研究時間とコストに比例する」と考えると、「持続可能なエネルギー」の実用化に至る期間は、相当短くなると思う。
 でも、Manta さんが指摘する問題もあるわけなので、国としてメタハイをどう位置付けるか?というのが問題になってくるよね。
 で、より早い実用化を目指すなら、それに応じた工数とコストを投入するべきじゃないかなぁ、と思った次第。
 資源の中東依存から脱却できる可能性もあるし、国際社会への政治力も変化するような気がするなぁ。

>どうも「サステイナブル」という言葉は特に具体的な定義はないようです。

 そうそう。
 これが言葉の、特に横文字流行語の怖いところ。
 明確な意味をみんなが共有しないまま、言葉だけが一人歩きして、我が物顔で飛び回るんだよね。
 官公庁の報告書なんかでも、「横文字流行語」がてんこ盛りだよね。
 言葉の意味ってのは、特に議論する場合は、明確にしておいた方が良いよね。 =)
by ちゃめ (2006-11-24 22:12) 

MANTA

- 私の知る限り、かなりいろんな研究機関でメタハイは研究されてますよ > ちゃめさん
国としてのスタンスは明確で、経産省が主導でメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)を立ち上げています。MH21以外にもゲリラ的?にメタハイの研究はされています。私の研究機関もそう。メタハイの地球環境に与えるインパクトを中心に基礎研究をしてます。でもMH21関係の研究者とは交流ありますよ。
by MANTA (2006-11-25 10:33) 

ほのぼの101

なんか巨大な風力発電所を海上に建設するプロジェクトがあるそうですね~~~。たまたま私が覗いたブログで見つけましたよ~。
http://plaza.rakuten.co.jp/spaceplanners/diary/200611270000/#trackback
by ほのぼの101 (2006-11-28 09:50) 

MANTA

- 拝見しました。すごいですね~
電気として蓄えず、水素として蓄える、ですか?
ただ風力→電力→水素→燃料電池として発電、などと変換を繰り返すたびに効率は下がっていくはずなので、最終的にはどれくらいのエネルギーを取り出せるか気になりますね。
自然エネルギーというとすぐ「無限」「クリーン」というイメージがありますけど、果たしてどの程度なのか?エネルギー関係は皆さん興味大のようですので(私も)、また調べてみたいと思います。
by MANTA (2006-11-29 08:32) 

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