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日本沈没 回答編5(地球温暖化) [ 連載 Old..]

もういっちょ、つづきです。

Q.テクトニクスで沈めるよりも、海水面上昇で沈めた方が、簡単?

地球温暖化、ですね。実は私もよく知らなかったのでちょっと調べてみました。

なるほど、ヒマラヤの氷河はけっこうな速度で解けているようですね。
こちらに写真がありました。
●名古屋大学大学院環境学研究科雪氷圏研究グループ
 http://snowman.hyarc.nagoya-u.ac.jp/Research/Nepal/HV/rs1.html

ただ地球温暖化による海面上昇では日本を沈めるにはいたりません。
現在のグリーンランドと南極の氷床が溶けると、海水準はおよそ80mを上昇するそうです。
海水準変動 Wiki
Wikiページには具体的な算出方法は示されていませんが、地球上の氷の総体積と海の総面積から、概ね計算できます。
●氷山と水位と地球環境((株)アープさん)
 http://www.arp-nt.co.jp/rensai/index-sono2.html
これによれば、海水温上昇など複雑なことを考えない場合、70mほど上昇するようです。

… … …
さて、これはグリーンランドや南極などの氷床が全部解けきったときの値です。ただし氷が全部解けるには相当の時間が必要です。たぶん1万年くらい、いやもっとかな? では今後100年間に海面はどれくらい変化するのでしょうか?

実は南極の氷床は、今後100年間は温暖化にもかかわらず、海面を引き下げてくれるらしいのです!どうやら、温暖化によって南極地方に雨(雪)が降りやすくなり、氷床がかえって厚く成長するためのようです。一方で、グリーンランドの氷床は解ける一方のようです。さて海面は上昇するのか低下するのか?氷河や氷床の影響だけトータルすると、今後100年間では10~20cmくらい海面が上昇するようです。意外にチョビットですね。
このことは上記の(株)アープさんのページで述べられています。出典がないのですが、おそらく地球シミュレータを使った高解像度の計算結果などに基づいているのだと思います。興味のある方は下記などをご覧ください
●地球環境変化予測のための地球システム統合モデルの開発
 (JAMSTEC地球環境フロンティア研究センターなど)
 平成17年度 研究成果報告書 氷床の変動の予測に関する研究

地球上の氷の融解に加えて、今後100年間の海面上昇に大きな影響を与えるのは「暖められた海水の膨張」です。これも上記の(株)アープさんのページにあります。出典はわかりませんが、下記は近いですかね?
●電力中央研究所のプレスリリース
 http://criepi.denken.or.jp/
 ページ右上の「プレスリリース」をクリック
 →2004/11/29 「西暦2450年までの地球温暖化を地球シミュレータで予測」をクリック
 (これも地球シミュレータですか。しかも西暦2450年って!)

説明資料の30ページ目のグラフによれば、海水の熱膨張による上昇量は15cm以下でしょうか?
こういった数値計算はどのような仮定で何を入力値として計算するかで、結果が大きく変わるのですが、いくつかの資料を見たところ、氷の解ける分と海水の膨張する分をあわせた海面上昇は今後100年間で30-40cmくらいのようです。

というわけで地球温暖化では「東京沈没」すら難しいようですね。

… … …
ただし!海面変動は100年で終わるわけではありません。仮に、二酸化炭素の排出量を2100年までに厳しく規制しても、氷床が解けたり海水温や気温が上がったりするのを急に止めることはできません。どうも数百年~数千年にわたって温暖化の影響は残るようです。氷床も当分復活しそうにないそうですよ。しかも南極の氷床が解けていくと、南極の周りの海水の塩分濃度が下がります。南極の周りの海水は海洋大循環で地球上に循環してますから、地球の海水循環のパターンが変わります。海洋生態にはすぐ影響が出るでしょう。また海水温の分布と台風やハリケーン発生は関連が高いので、異常気象が継続することになります。永久凍土の下の地層にあるメタンハイドレート融解もおそろしい。メタンガスは二酸化炭素の20倍の温暖化効果を持つといわれています。極域の氷が解けるといったい何がおきるのでしょうか…? 全部をシミュレートした例はどっかにあるんかな?

はぁ…私たちの代では「東京水没」はないとしても、魚が取れなくなったり、台風がバカスカきたりしますね。子供たち、孫たちの代にもっと大きな負の遺産が残るかも。一方で経済活動を抑えることも難しい。二酸化炭素の地中固定が排出量削減のもっとも現実的なプランのようですが、各国まだまだ技術的な困難を抱えています。どうすりゃいいのかねぇ。

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おまけ1:
おもしろそうな本を発見。ブログ「ちょっと絵えほん♪」さんで紹介されてました。
http://eehon.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_e4ed.html
よんでみよっと。

くらべてわかる世界地図〈6〉環境の世界地図

くらべてわかる世界地図〈6〉環境の世界地図

  • 作者: 新美 景子
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2005/02
  • メディア: 大型本

おまけ2:
電力中央研究所のプレスリリース資料をみると、最近の数値計算の精度は上がってるんですねえ。過去の気温変化をほとんど再現できてます。図6とか図8とか。
お、図6には前記事のピナツボ火山の影響も見れますね。どうやら火山を使った「地球寒冷化作戦」は一時しのぎに過ぎないようです…

さらにおまけ:
どうでもいいんですけどね、上記の「地球環境変化予測のための地球システム統合モデルの開発」のページは引用すらだめだ、文部科学省の許可がいる、とおっしゃってます。リンクももちろんだめでしょう。だったらこんな資料、ネットにおいておく価値あるんだろうか?

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コメント 5

ちゃめ

 うわぁー!
 いっぱい調べて、いっぱい書いてくれましたね。
 疑問に答えて下さり、有難うございます。
 今後100年間の海水面上昇量が、30~40cmというのは、以前喧伝されていた数値よりも若干少ないような気がしますね。

>永久凍土の下の地層にあるメタンハイドレート融解もおそろしい。
 これは怖いですねぇ。
 温度上昇の結果発生するイベントの相互関係や相乗関係を再現するのには、ローデータの質と量の問題が付きまとうでしょうね。

 さてさて、温暖化による日本沈没。
「物理的には沈まないけど、経済的にはどうかな?」
 海浜の減少、低地への塩水の浸入、高潮のリスク増大、食糧生産への影響、水産資源の変化、水資源の確保などなど。
 不安に怯える必要はないですが、温暖化を緩和するためにできることは、今すぐに実行した方が良さそうですね。
by ちゃめ (2006-09-04 10:57) 

めーべる

MANTAさん、はじめまして。
ちょっと絵えほん♪のめーべるです。
TB&ブログの紹介ありがとうございました。
最初、私には縁のなさそうな専門的なブログかなと思ったんですけど、あちこち読ませていただいていると、いろいろ興味がわいてきました。
中学生の息子も興味を示していました。
素人にもわかるように用語の解説なども加えてくださると、嬉しいです。
また、お邪魔しますね!
by めーべる (2006-09-04 21:48) 

MANTA

- がんばって?調べましたよー > ちゃめさん
温暖化モデルを考えている人は、大気+海洋のモデルばかりで地面や改訂より下は考えてません。これが怖い。メタンハイドレートはその一例です。他にも微生物などの活動が温暖化にどう影響をあたえるのかなど気になりますよ。
経済的沈没は、とうにはじまってい…(ムグムグ)

- めーべるさん、はじめましてです。
できるだけ楽しい記事を心がけております。今後もへんなツッコミ記事とかおりまぜてお送りいたします。
用語についてはできるだけ専門的にならないよう気をつけてますが、どうしても行き届かないようですみません。用語解説シリーズなんてのもあってもおもしろいのかな?
by MANTA (2006-09-05 09:50) 

ちゃめ

>経済的沈没は、とうにはじまってい…(ムグムグ)
 うひゃひゃ!
 って、笑っている場合じゃないよね。
 世界規模で見ると、相当影響が出ていると、見方によっては解釈できるみたいだし…。
 モルジブの砂もだいぶ流出したみたいだし…。

 昨年冬に大寒波に襲われた欧州では、北極海の海氷が消失することによる熱塩循環の弱体化に危機感を募らせているみたい(←世界中が凍る映画の影響か?)。

>大気+海洋のモデルばかりで地面や…
 うーむ、それでは計算結果が心もとないぞぉ。
 税金使ってやってるんだから、きちんと地面や海底との相互関係も考えましょう。>シミュレーションの研究者さま
 なーんちゃって(笑)。

>文部科学省の許可がいる
>リンクももちろんだめでしょう。
 リンクはネットユーザーの不可分の権利、という考え方もあるみたいですね(私はこれに賛成)。
 引用に許可が要るのは、まぁ当たり前ですが、リンクにも許可が必要ってのは、なんかなぁ…。
 こういう事を言うのは日本だけなのかなぁ?
(かといって、私は「リンクしちゃいや」っていうサイトにはリンクを貼りませんし、「連絡ヨロ」って言うサイトには、もちろん、連絡しますよ)。
by ちゃめ (2006-09-05 13:11) 

MANTA

- 本当に温暖化はおそろしい。いますぐなんとかしなきゃ。なんせ火山の噴火1回2回くらいでは、温暖化はびくとも揺るぎませんもんね。まずは正確な将来予測。モデル屋さん、がんばってー!

リンクについては私自身の考えは下記にまとめてます。
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2006-01-21
おどろいたのは引用もだめということ。そういえばホームページってどう引用するのが推奨されているんだろう?他にも引用禁止のページってあるのかなぁ… また忘れたころに記事にしてみます。
by MANTA (2006-09-06 07:15) 

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