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ここがおかしい「日本沈没」 (微生物) [ 連載 Old..]

「日本沈没」、いまあらためて予告編をWEBで見ましたけど、本編をもう1回じっくり見たくなりましたね。
http://www.nc06.jp/
ともかく細かい部分の表現が緻密でしたから。

しかしこの映画、まだ映画をご覧になっていない方もおられますし、うちの研究所も全面協力してますんで、前の記事では「科学面では満点」と書きましたが、細かい表現が緻密な割には随所ででっかいアラが目立ちます。特に科学面については、海の研究者として突っ込まないわけにはいきません。以下は映画好きの方から見たら相当マニアックな突っ込みですが、お許しを。

ちなみに今回の記事は思いっきりネタバレありです


(写真はイメージです。本文とは関係ありまへん。)

いいですか~


●科学的緻密さが素敵な日本沈没
 まず科学描写がよいなーと思うところを列挙しましょう。
・わだつみ6500の潜航シーンはCGですけど、すばらしいですね。きっとあんな感じです。
・人工地震探査のシーンは、リアルすぎ。発破の際に水、噴出しますもんね。
・「巨大地震が発生、マグニチュード増大中! 対策本部にあと10秒で本震、きます!」って、いま気象庁が準備中の緊急地震速報のすごい版ですね。
・衛星から見た日本列島。沈んでいく。リアルだ。
・噴火やマグマはリアルで見たことないからわかんないや。

●日本は沈まない
 ほめておきながら、いきなり全否定ですみません。だって沈まないんです。
日本列島の下に沈みこむ海洋プレートが微生物が発生するメタンガスの影響もあって沈み込み速度をましているため、日本列島が引きずり込まれて「一気呵成」に沈み込むことになってます。たしかにメタンガスは断層を滑りやすくするでしょう。すると海洋プレートと日本列島の境目の巨大断層(プレート境界断層と呼びます)も滑りやすくなって、日本列島は海洋プレートには引きずり込まれません。おしまい。


 なにごともなく、平和な日本…

あー映画が終わってしまった。よし、仮に引きずり込まれるとしましょう。それでも日本は沈みません。日本列島の地殻(地表から深さ30kmくらいの部分)は温度が低いために硬い岩石から構成されています。とはいえ硬さにも限度はあります。あまり力を加えると岩石は割れます。これが地震なわけです。今回のように海洋プレートが日本列島をものすごい速さで引きずり込んだとしても、地殻がその力に耐え切れず割れてしまうでしょう。大きな地震とともに、日本列島はその反発で隆起します。N2爆弾を仕掛けなくても地震は自然に起きていて、日本列島はいっこうに沈みません。おしまい。あーこれでは爆弾を仕掛けにいった二人の潜水船パイロットとわだつみシリーズが無駄死にだ。


 爆薬がなくても地震のおかげ?で沈まない日本列島

まあこの場合は海でも陸でも、バンバン巨大地震が起きますから、沈まないまでも日本中の建物も交通網も山も川もめちゃめちゃですけどね。うーむ。しかし、われらがわだつみシリーズを簡単に沈めないでほしいなあ。とくに6500は。現役だし。

まだつづくよ。

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おまけ:
「日本沈没」を監修した東京大学地震研究所では、期間限定で「日本沈没」と地球科学に関するQ&Aコーナーを公開しています。私の記事よりずっとわかりやすい。答えにくい質問にも解答されていて脱帽(+爆笑)です。Y先生、お疲れ様です。
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/filmnc06/eri_qa.html

※追記:イラスト2つを追加しました。スケールとかは適当ですから。

※追記2:前の記事で、かっぱさんから以下のようなコメントをいただきました。
『 「わだつみ」っていう潜水調査船、ホントにあるんですか?と学生に聞かれてしまいました。一部、実在する名称を使っているのかな?』
「わだつみ」は小松左京氏が1973年の原作で名づけた潜水船の名前です。「しんかい2000」の完成は1981年。つまりフィクションが現実より先んじていたわけです。今回のリメイク映画で「しんかい」の名をあえて使わなかった理由は不明ですが、おそらくは潜水船を2つも沈めるにあたって本物の名前を使うのに製作者が躊躇した(あるいは使用許可が出なかった)のではないか、と推測しております。(ネタバレを含みますので、こちらに書かせていただきました)

※この記事の続きをよむには、サイドバーの「カテゴリーの紹介」をご覧下さい。
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ちゃめ

 いつもにもまして面白いね!
 原作は小松左京だよね、このリメイク版も。
 このツッコミを読みながら、逆説的に考えたんだけど、30年以上前に、「日本沈没」を描いた小松先生は、やっぱすごいんだろうね。
 温暖化を絡めた作品、進めてみようかな=)。
by ちゃめ (2006-07-22 23:46) 

いとまっち

MANTAさんこんばんわ、はじめまして!
ソネットの「日本沈没ネタ」のブログつながりで参りました。
作中の田所博士の猫の飼い主です。ですので評判が気になってます。

実は…私は年増の地理学科学生なので、やはり…「…沈まないよ。。。」と思ってましたが、友人たちがみんな試写会見に来てくれてツッコミ満載で大変でした。(誰もジーンとなってくれない…(T_T))
リアルで活断層を巡検に行ったり、何を思ったかオガサワラ・ボルケーノアイランドまで行っちゃったり、そして今回ロケで日出の「ちきゅう」を体験しました。(MANTAさんはJA●STE●の方でしょうか?)
中国に負けずにメタンハイドレートを掘るのでしょうか?15ノットでビルが動くのを想像するだけでワクワクします。
学歴がないので調理師でもいいから乗船してみたいな~と強く思いました。
また興味深いお話聞かせてくださいね。
by いとまっち (2006-07-22 23:56) 

MANTA

- 小松先生はほんとうに凄いですね。事実、(長い時間がかかるとはいえ)日本は沈みうるのですから。それはこのあとの記事で書きますね。逆に、もっとすばやく日本を沈める方法はないかなぁ。記事で募集してみるかな?あ、上記、図を追加して分かりやすくしてみました。

いとまっちさん、コメント感激です。あの恰幅のよいネコですよね?聞くところによると、暑いさなかの撮影だったので、ネコは大変だったそうですね。大丈夫でしたか?あと出演者のみなさんにずいぶんかわいがられたとも聞きました。ネコにはもっと活躍してほしかったです(笑)
映画そのものは人によってずいぶん印象が違うようです。私自身はもうちょっとテーマをひとつに絞って訴えかけてほしかったですが、いいかえればいろんな人に訴えかけられる映画だということかもしれませんね。
by MANTA (2006-07-23 16:28) 

おとうたま

MANTAさんカキコ&Niceサンキューでございます。
すいませんね〜ぶちぶち変なことばっかり言ってる我が家まで来て頂きまして・・・
あらためてMANTAさんの記事の数々を読ませて頂いて「をー!をー!(感嘆の声)」の連続でございます。
また勉強させてもらいに遊びに来ます。
よろしくご教授の程お願い奉りまする。
by おとうたま (2006-07-23 17:03) 

MANTA

- コメントありがとうございます > おとうたまさん
石坂首相の言葉は印象的でしたね。石坂首相が主役でもいいと思いました。しばらく日本沈没ネタをやりますので、またお越しくださいませ。
by MANTA (2006-07-23 20:25) 

白嶺丸

>人工地震探査のシーンは、リアルすぎ。発破の際に水、噴出しますもんね。

この映画にはJAMSTECが全面的に協力しているそうですが、JGIも一部協力しているそうです(クレジットは無いようですが・・・)。JGIの技術者が探鉱機GDAPSを操っているシーンがあるとか。まだ映画は観ていないのですが、その地震探査のシーンかもしれません。
by 白嶺丸 (2006-07-24 16:22) 

t

昨今の状況をみてると完全に空想だとは
言い切れなさそう…
当然だけど現象が理論より先だから…
by t (2013-05-29 21:14) 

MANTA

>昨今の状況をみてると完全に空想だとは
>言い切れなさそう…
映画って面白いですよね、上記記事の続きもありますのでぜひ御覧ください!
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2005-10-05-2
by MANTA (2013-05-30 08:29) 

チロ

本当に沈んだら、パニック映画になりません。日本版ハリウッド型パニック映画
酷評している方々はラブシーンは要らないとか感情論ばかりです。特攻隊を具体に的否定しているのと同じです。自分がジャリの時見た「日本沈没」は最後は、日本は最後全て沈んでしまいました。
総理が「日本は、心の中に生きる」とか言って去って行きました。
by チロ (2014-01-11 23:23) 

MANTA

チロさん、コメントありがとうございます。
ラブシーンと特攻隊がどんな関係なのか、ちょっと分かりかねますが…

>自分がジャリの時見た「日本沈没」は最後は、日本は最後全て沈んで
>しまいました。
「ライジングサン」だった時代と、「失われた20年」の時代の違いでしょうか?
映画の中とはいえ「日本を沈没」させるのは抵抗があった、とか?
また日本映画だけでなく、ハリウッド映画でもパニックSFものはつまらなく
なりました。なんででしょうね?

by MANTA (2014-01-12 11:06) 

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